
モダニズム建築と聞いて、どんなデザインをイメージしますか?なんとなく耳にしたことはあるけれど、明確にイメージができる方は決して多くありません。そこで今回は、モダニズム建築について歴史や特徴、魅力をまとめてみました。興味がある方は、ぜひチェックしてください。
モダニズム建築の歴史
モダニズム建築をご存知ですか?新しい素材を使用し、機能性と合理性を重視した普遍的なデザインと直線的な構成は、美しく存在感があります。日本では明治・大正時代にモダニズム思想が導入され、有名な建築家によって発展していきました。
ここでは、モダニズム建築の歴史について解説します。
19世紀末から20世紀半にかけて成立
モダニズム建築は、19世紀の産業革命以降に導入された「新しい建築様式」です。鉄・ガラス・コンクリートといった工業製品を使用し、余計な装飾を施さないデザインは「白い箱」や「豆腐」と形容されています。
1931年竣工のル・コルビュジエ「サヴォア邸」や1929年竣工のミース・ファン・デル・ローエ「バルセロナ・パビリオン」が代表的ですが、日本では明治・大正時代にモダニズム思想が導入され、前川國男や丹下健三などが発展に貢献しています。
日本の最高傑作は3つ
日本のモダニズム建築といえば、国立代々木競技場(代々木体育館)・東京カテドラル 聖マリア大聖堂・国立西洋美術館が有名です。
とくに国立代々木競技場は、モダニズム建築なしでは避けてとおれません。1964年に東京オリンピックのサブ会場として建設され、戦後20年程経った今もモダニズム建築の最高傑作として大きく構えています。
ダイナミックな屋根は、丹下健三の代表的な作品です。ワイヤーロープによる釣り屋根構造を用いており、柱のない大空間は国立代々木競技場の魅力のひとつでしょう。
次に、東京カテドラル 聖マリア大聖堂です。こちらもまた、モダニズム建築でお馴染みの丹下健三による作品です。外壁やシルエットは国立代々木競技場を感じさせますが、最大天井高40mの空間に差し込む光が幻想的な印象を与えます。
国立西洋美術館は、ル・コルビュジエによって設計されました。ピロティーと呼ばれる柱の並んだ吹きさらしの空間で支えた重厚な建物は、内部にコルビュジエが提唱した建築コンセプト「無限成長美術館」の概念を用いた自由な設計となっています。
モダニズム建築の特徴と魅力
これまでの建築様式を一蹴し、誕生したモダニズム建築には、さまざまな特徴が魅力があります。たとえば、ピロティーやコンクリート製の柱やフロアプランの自由設計、水平連続窓などです。
ほかにも、以下のような特徴が見られます。
装飾は最小限
モダニズム建築の大きな特徴となっているのが「最小限な装飾」です。白い箱や豆腐と形容されるだけあり、デザインに無駄がありません。なかには装飾を排除した建築物も存在します。必要な機能だけを採用しているので、機能的で合理的なデザインが印象的です。
新素材を使用
使用している素材も、鉄やコンクリートといった工業製品が主になります。これらの素材に特有の構造や表現を生み出しているのがモダニズム建築です。
オープンプランと水平的なライン
モダニズム建築といえば、オープンプランの空間や建物の水平ラインが強調されているのが特徴です。また、ガラスで覆われた壁面は内外の空間をつなぎ、自然との境界線を曖昧にすることを可能にしています。
モノトーン配色
装飾の少ないシンプルなデザインは、配色もモノトーンが主流です。モノトーンを採用することで独特なシルエットやデザインを最大限に生かせるからです。
白や黒が人気ですが、グレーやベージュ、チャコールなどのニュアンスカラーを取り入れたデザインも少なくありません。
一方で、個性を演出するためにカラーを用いるケースもあります。外壁をモノトーンでまとめ、窓枠や軒裏にカラフルな色でアクセントを加えることで遊び心のある外観に仕上がるでしょう。
特徴的な屋根・壁・窓
屋根・壁・窓にも、モダニズム建築ならではのデザインが光ります。
屋根は、凹凸や軒の少ないスタイルを採用することが多いため、片流れ屋根や切妻屋根、陸屋根(フラットルーフ)などが相性抜群です。とくに片流れ屋根や切妻屋根は、緩勾配がモダンな印象になりやすいでしょう。
壁は、コンクリートの打ち放しや無機質な素材を用いているのが特徴です。柄のないフラットなデザインは、よりモダンらしさを演出します。質感の異なる素材を組み合わせることで、外観にメリハリをつけることも可能でしょう。
和モダン建築の場合は、竹や木の格子が趣のあるデザインに仕上げてくれます。
窓は、外観の形状に合わせてオーダーメイドサッシにしたり、自由設計の既製サッシを用いたりすることも可能です。ただし、大きさや形、デザインはしっかり吟味して選ぶ必要があります。
スクエア型のフォルムを基本としている場合は、細長いスリット窓が好相性でしょう。
コンテンポラリー建築との違い
モダニズム建築と似て非なる建築が「コンテンポラリー建築」です。コンテンポラリーとは「現代の」「同時代的な」という意味があり、現代建築と呼ばれることもあります。今風を追求したトレンド性の高いスタイルというとわかりやすいでしょう。
たとえば、loTやスマートハウス、サステナブル住宅などが該当します。
まとめ
これまでの建築様式とは異なり、無駄な装飾がなくシンプルでオシャレなモダニズム建築は、日本でもさまざまな建築物に用いられています。今回は、そんな魅力的なモダニズム建築について紹介しました。デザインにピンとこない方も、国立代々木競技場や聖マリア大聖堂と聞くとイメージしやすいのではないでしょうか。和やナチュラルとの相性もよく、多様なスタイルが叶えられるのもモダニズム建築のよいところです。そんな無駄を省いた機能美を、ぜひ堪能してください。